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発注ラボ HATCHU LAB
AIで内製化 #デザイン内製#画像生成AI#商用利用#外注費削減

社内デザインはAIでどこまでできるか|外注との線引きと権利の注意点

バナー・チラシ・SNS画像をAIで社内制作する現実的な範囲を整理します。AIに任せてよいもの、プロに出すべきもの(ロゴ・印刷入稿・規制業種)の線引きと、商用利用で確認すべき権利の論点を実務目線で解説します。

公開 約6分で読めます 発注ラボ 編集部

結論を先に書きます。デザインの外注費は、生成AIで減らせます。ただし減らせるのは制作物の一部だけです。具体的には、寿命が短く、頻度が高く、失敗しても差し替えが効くものは社内で作れます。逆に、寿命が長く、対外的な信頼に直結し、やり直しの費用が大きいものは外に出すべきです。この線引きを曖昧にしたまま「デザインは全部AIでいい」と決めた会社は、半年後に作り直しの見積を取ることになります。この記事では、その境界線と、商用利用で確認すべき権利の論点を扱います。

AIに任せていいデザインと、プロに出すべきデザイン

判断軸は3つです。「その制作物は何年使うか」「間違っていたときのやり直し費用はいくらか」「法規制が関わるか」。この3つで分けると、迷いが消えます。

制作物 想定寿命 社内AI制作の適否 理由
SNS投稿画像・週次バナー 数日〜数週間 適する 量が多く、差し替えが容易
社内掲示・朝礼資料の図版 数週間 適する 社外に出ない。体裁より速度
簡易なキャンペーンチラシ(配布少数) 1〜3か月 条件付きで適する 印刷入稿の要件を満たせるかが分岐点
会社案内・採用パンフレット 2〜5年 適さない 取材・構成・撮影が本体。画像生成は一部
ロゴ・コーポレートカラー 10年以上 適さない 商標調査と多媒体での運用設計が必要
規制業種(医療・美容・食品等)の広告 期間を問わず 適さない 表示規制の確認が本体の作業

なぜロゴは外に出すべきなのか

ロゴをAIで生成すること自体は簡単です。問題はその後です。ロゴは名刺、看板、封筒、車両、作業着、Webサイト、押印する書類にまで展開されます。そのとき必要になるのは、極小サイズでの可読性、単色印刷への変換、背景色が変わっても成立する形、そしてベクターデータでの納品です。さらに重要なのが商標の調査で、既存の登録商標と類似していた場合、使い始めてからの変更費用は制作費を大きく超えます。

つまりロゴの発注で買っているのは、絵ではなく「長期間使っても破綻しない設計と、権利上の安全確認」です。ここを削るのは節約ではなく、先送りです。

なぜ印刷入稿でつまずくのか

画面で見る画像と、印刷所に渡すデータは仕様が違います。色の指定方式(画面はRGB、印刷はCMYK)、解像度、断裁ズレに備えた塗り足し、文字データの扱い。これらの条件を満たさないと、入稿後に差し戻されます。生成AIが出力するのは画面用の画像です。

現実的な折衷案は、印刷会社が配布しているテンプレートを使い、AIで作った画像素材を配置する方法です。この場合でも、色が画面どおりに出ない可能性は残ります。少部数なら割り切り、数千部の販促物なら入稿込みで発注する。この判断で十分です。

画像生成AIの商用利用で、実際に確認すべきこと

「AI画像は商用利用していいのか」という問いは、二つの別々の問題が混ざっています。分けて考えます。

第一の問題:ツールの規約が商用利用を認めているか

各サービスは、生成物の利用範囲を利用規約で定めています。プランによって商用利用の可否や生成回数の上限が異なる場合があるため、無料プランで試したときの条件が、そのまま業務利用に適用されるとは限りません。学習データの出所を明示しているサービスもあり、たとえばAdobeは自社のFireflyについて、Adobe Stockのアセットやパブリックドメイン、オープンライセンスのコンテンツを学習に用い、商用利用を想定して設計していると説明しています。料金や提供条件は改定されるため、契約前に公式ページで確認してください。

第二の問題:生成物そのものが誰かの権利を侵害していないか

こちらのほうが重要です。文化庁が令和6年3月15日に公表した「AIと著作権に関する考え方について」では、生成AIによる生成物であっても、生成・利用段階において既存の著作物との類似性および依拠性が認められれば、生成行為や利用行為が著作権侵害となり得るとされています。文化庁は令和6年7月31日に「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」も公表しており、立場ごとの留意点が整理されています。

実務に落とすと、社内ルールは次のようになります。

  • 特定の作家名・作品名・キャラクター名をプロンプトに入れない
  • 実在の人物に似た顔を、本人の許諾なく広告に使わない
  • 生成物を公開前に画像検索にかけ、既存作品との酷似がないか確認する
  • 既存のブランドロゴや商品パッケージが写り込んだ画像を使わない
  • 生成に使ったプロンプトと日付を記録に残す(後から説明できる状態にする)

最後の記録は軽視されがちですが、問題が起きたときに経緯を説明できるかどうかは、対応の速さを大きく左右します。

規制業種では「画像が何を暗示するか」が論点になる

医療、美容、食品、健康関連、金融、不動産。これらの分野では、表現そのものに業法上の制約があります。加えて景品表示法では、実際のものより著しく優良であると一般消費者に誤認させる表示が禁止されており、消費者庁は表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めることができるとされています。

ここで生成AIが危険なのは、指示していない情報まで画像が語ってしまう点です。たとえば「明るい施術後の女性」と指示しただけで、AIは劇的な変化を暗示するビジュアルを作ることがあります。写真ではないから問題ない、とはなりません。受け手がどう受け取るかが判断の対象です。

規制業種の会社が社内制作を進めるなら、画像生成そのものより先に、「この表現は出してよいか」を確認する担当と手順を決めてください。AIは確認作業を代行しません。

外注を続けるべき範囲を、見積で検証する

社内制作に切り替える判断と、外注費が適正かの判断は別です。デザイン費が高いと感じたとき、原因が「作業量」なのか「単価」なのか「不要な工程」なのかを分けないまま内製化に走ると、必要だったものまで失います。

見積の内訳を読む手順は見積書の内訳を読み解く方法に、Web制作全体の相場観はホームページ制作費用の相場にまとめています。複数社を比べる際の観点は制作会社の比較方法が参考になります。まず既存の見積を分解し、そのうえで「この項目は社内でできる」と判断した部分だけを引き上げるのが、損害の少ない順序です。

社内制作を定着させるための最低限の体制

ツールを契約しただけでは、デザインは社内に残りません。最低限、次の3つを決めてください。

  1. テンプレートを固定する:ロゴの位置、書体、配色、余白を決めた雛形を作る。毎回ゼロから作らせない
  2. 確認者を1人決める:公開前に必ず1人が見る。権利と表現の両方をチェックする
  3. 素材を1か所に集約する:担当者の個人PCに散らばると、退職時に何も残らない

総務省の令和7年版情報通信白書では、生成AIの活用方針を示した日本企業は49.7%(前年度42.7%)とされ、懸念としては「効果的な活用方法がわからない」が最も多く挙げられています。裏を返せば、型と手順さえ用意すれば越えられる壁だということです。社内での教え方は社内AI研修の設計で、資料作成側の応用は資料作成をAIで行う方法で扱っています。

AIに置き換わらない工程は残る

正直に書きます。生成AIが担うのは、案を大量に出す工程と、既存の型に沿って量産する工程です。次の工程は人に残ります。

  • 何を伝えるかを決める(コンセプトと優先順位の決定)
  • 実際の商品・現場・人を撮る(実在の証明としての写真)
  • 媒体ごとの仕様に合わせる(印刷入稿、各SNSの規格)
  • 出してよいかを判断する(権利・表示規制・社内の合意)

この4つを誰がやるのかを決めずにツールだけ入れると、作業は増えて成果物は減ります。

この記事の要点

  • 社内AI制作が向くのは、寿命が短く・頻度が高く・差し替えが効く制作物。ロゴ、印刷物、規制業種の広告は外部に出す。
  • 商用利用の問題は「規約が認めているか」と「生成物が他者の権利を侵害していないか」の二段構えで確認する。
  • 文化庁の整理では、生成物であっても既存著作物との類似性・依拠性が認められれば侵害となり得るとされている。
  • 規制業種では、画像が暗示する効果まで表示規制の対象になり得る。確認する担当と手順を先に決める。
  • 内製化の前に既存の見積を分解し、「社内でできる部分」だけを引き上げる。全部を内製にしないこと。

📎 参照した一次情報

数値は執筆時点の公表値です。制度・相場は変わります。契約前に必ず最新の一次情報をご確認ください。

よくある質問

Q AIで作った画像は商用利用して問題ありませんか。
A

ツールの利用規約が商用利用を認めていることと、生成物が第三者の権利を侵害しないことは別の問題です。文化庁が令和6年3月に公表した「AIと著作権に関する考え方について」では、生成・利用段階において既存の著作物との類似性および依拠性が認められれば、生成行為や利用行為が著作権侵害となり得るとされています。つまり規約上OKでも、特定のキャラクターや既存作品に酷似した画像を広告に使えばリスクは残ります。規約の確認と、生成物そのものの確認の両方が必要です。

Q ロゴをAIで作ってはいけないのはなぜですか。
A

技術的には作れますが、ロゴは長期間・多用途に使う資産であり、求められるのは見た目の良さではなく運用の耐久性だからです。極小サイズでの可読性、単色印刷への変換、刺繍や看板など再現性の低い媒体での成立、そして商標として登録できるかの調査。これらはデザインの作業ではなく設計と調査の仕事です。さらに他社の既存商標と類似していた場合、使い始めてからの変更コストは名刺・看板・車両・Webの全面刷新に及びます。ここは外部の専門家に出す領域です。

Q 印刷会社への入稿データもAIで作れますか。
A

画面用の画像と印刷用のデータは別物です。印刷では色の指定方式(CMYK)、解像度、断裁のための余白(塗り足し)、文字の埋め込み処理といった条件があり、これらを満たさないデータは印刷会社から差し戻されます。生成AIが出力するのは基本的に画面用の画像です。社内で作るなら、印刷会社が用意しているテンプレートに沿って入稿するか、データ作成まで含めて発注するほうが、結果的に手戻りが少なく済みます。少部数のチラシほど判断が分かれる領域です。

Q 医療・美容・食品などの広告でもAI画像は使えますか。
A

使える場面はありますが、確認の手間は他業種より確実に増えます。これらの分野では効能や効果の表現に業法上の規制があり、加えて景品表示法により、実際のものより著しく優良だと誤認させる表示は禁止されています。AIが生成した「理想的すぎるビフォーアフター」や「実在しない症例写真風の画像」は、この観点で問題になり得ます。規制業種では、画像そのものより「その画像が何を暗示しているか」が論点になると理解しておいてください。

Q 社内制作に切り替えると、外注費はどれくらい減りますか。
A

一律の削減率は示せません。構造として言えるのは、減るのは「量が多く・使い捨てで・修正が頻繁な制作物」の費用だということです。週次のSNS画像、社内掲示、簡易なキャンペーンバナーなどが該当します。一方でロゴ、会社案内、印刷物、採用サイトのメインビジュアルなど、長く使うものや対外的な信頼に関わるものを内製に切り替えると、品質低下の代償が費用削減を上回ることがあります。まず制作物を頻度と寿命で分類するところから始めてください。

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