制作会社を乗り換える手順|引き継ぎで失うものをゼロにするチェックリスト
ホームページの制作会社を変えるときに、ドメイン・データ・原稿・アクセス解析をどう引き継ぐか。切り出す順番を間違えるとサイトが止まります。契約解除の前にやるべきことを、時系列で整理しました。
制作会社の乗り換えで本当に怖いのは、料金でも品質でもありません。引き継ぎの順序を間違えて、サイトとメールが止まることです。
そして、その事故のほとんどは「解約を先に伝えてしまった」ことから始まります。関係が切れたあとに、ドメインの認証キーやサーバーのパスワードを聞き出すのは、想像よりずっと難しい。
この記事では、乗り換えを「解約の話を切り出す前」と「切り出したあと」に分け、それぞれでやるべきことを時系列に並べます。
まず、自社が何を持っていないかを確認する
乗り換えが難航する会社には共通点があります。自社のサイトを構成する資産のうち、どれを自社が保有しているのかを、誰も把握していないという点です。
次の6つについて、「名義」と「アクセス権」を確認してください。
| 資産 | 確認方法 | 自社にない場合のリスク |
|---|---|---|
| ドメイン | WHOIS検索、または登録事業者の管理画面 | 移管を拒まれるとURLを変えざるを得ない |
| サーバー | 契約書、管理画面のログイン情報 | データを取り出せない |
| サイトのデータ(HTML・画像・DB) | FTP/管理画面からダウンロードできるか | 作り直しになる |
| 原稿・写真の権利 | 契約書の著作権条項 | 文章や写真を新サイトに使えない |
| アクセス解析(Google Analytics 等) | 管理者権限が自社アカウントにあるか | 過去データを失い、効果検証ができなくなる |
| 独自ドメインのメール | どこで受信しているか(サーバーか外部か) | 移行時にメールが不達になる |
このうち、最も揉めるのがドメインです。名義の確認方法と、名義が自社でなかった場合の選択肢は、ドメイン・データを取り戻すで詳しく扱っています。
契約書を先に読む
同時に、現在の契約書で次の4点を確認します。
- 契約期間と、自動更新の有無
- 解約の予告期間(「3ヶ月前までに書面で」などの定め)
- 中途解約時の違約金・残債の扱い
- 納品物の著作権と、ドメイン・サーバーの名義に関する条項
契約書が手元にない、あるいは署名した記憶しかないという場合は、この時点で「契約書の写しをください」と依頼してください。これは解約の意思表示ではないため、この段階で伝えても問題になりにくい依頼です。
違約金を請求されそうな場合の考え方は、違約金を請求されたときの妥当性チェックにまとめています。
次の依頼先を、解約前に決める
順序として重要なのは、次を決めてから、今を切ることです。逆にすると、空白期間のあいだサイトが更新できず、問い合わせも止まります。
次の依頼先を選ぶとき、価格だけで比較すると同じ失敗を繰り返します。確認すべきは次の点です。
- 見積が工程ごとに分解されているか(「一式」でないか)
- ドメイン・サーバーの名義を自社にできるか
- 納品物の著作権が自社に移転するか
- 保守費の対象範囲が、契約書に具体的に書かれているか
- 将来また別の会社へ移るとき、データを渡してもらえるか
最後の項目は、聞きにくいかもしれませんが、必ず聞いてください。その質問に率直に答えられる会社は、次も同じ誠実さで対応します。
見積の読み方そのものは「一式」の見積を分解する方法を、発注先の類型ごとの比較は発注先4パターンの費用と失敗リスクをご覧ください。また、現在の支払額が相場からどれだけ離れているかは、見積診断ツールでおおよその目安を出せます。
「乗り換える」以外の選択肢も検討する
乗り換えが唯一の解ではありません。次の3つの選択肢を、コストと時間で比べてください。
- 現在の会社と条件を再交渉する — 保守費の範囲を明確にし、更新作業を減らして減額する
- 乗り換える — 移行コストはかかるが、条件を作り直せる
- 一部を社内に戻す — 更新や原稿作成を内製化し、外注の範囲自体を縮める
3つ目は、以前なら現実的ではありませんでした。いまは、お知らせの更新やバナーの差し替え程度であれば、社内で完結できる範囲が広がっています。何を社内に戻せて、何を戻せないのかはバナー・チラシを社内で作るで線引きを整理しています。
引き継ぎの実務:止めないための切り替え手順
移行の失敗は、ほぼすべて「切り替えのタイミング」で起きます。次の順序を守ってください。
- 現サイトの完全なバックアップを取る — HTML、画像、データベース、原稿の元データ。新制作会社に取得させる場合も、自社にも1部保管する
- アクセス解析・検索コンソールの権限を自社アカウントに移す — ここだけは解約前に必ず済ませる。過去データは戻りません
- 新サイトを別環境で完成させる — 仮のURL(テスト環境)で動作確認まで終える
- メールの受信先を確認する — 独自ドメインのメールがどこで動いているかを特定し、移行計画に含める
- 切り替え当日、DNSを変更する — 反映には時間がかかるため、業務の少ない曜日を選ぶ
- 旧ページのURLから新URLへの転送(リダイレクト)を設定する — これを怠ると、検索からの流入と、他サイトからのリンクを失う
- 1週間、検索順位と問い合わせ件数を監視する — 異常があれば早期に対処する
このうち2番と6番は、忘れられがちで、かつあとから取り返せない項目です。
解約を伝えるタイミング
上記の1〜4まで終えた段階で、解約を申し入れます。予告期間の定めがある場合は、その分だけ前倒しが必要です。
申し入れは、口頭ではなく書面(メールで可)で行い、次を明記してください。
- 解約の意思と、解約希望日
- 引き継ぎを依頼する項目(データ、ドメイン移管の認証キー、各種ID)
- 引き継ぎの期限
- 最終請求額の内訳の提示依頼
返答が得られない、あるいは引き継ぎを拒まれる場合は、やり取りを記録に残したうえで、中小企業庁の取引相談窓口などの公的窓口に相談できます。
乗り換えたあとに、同じことを繰り返さないために
乗り換えは、条件をゼロから作り直せる唯一のタイミングです。新しい契約では、最低限このどちらも満たすようにしてください。
- ドメイン・サーバーの契約名義が自社であること
- 保守費で「何をしてもらえるか」が、契約書に作業単位で書かれていること
この2つが揃っていれば、次に不満が生じたときも、自力で動けます。乗り換えのコストが高くつくのは、資産を相手に預けていたときだけです。
そして、外注の範囲そのものを見直すなら、いまは選択肢が増えています。どこまでを社内で賄えるかの試算はAI内製化シミュレーターで確認できます。
この記事の要点
- 解約を伝える前に、ドメイン・サーバー・データ・権利・解析・メールの6点の所在を確認する
- アクセス解析の管理者権限の移管と、旧URLからのリダイレクトは、あとから取り返せない
- 新サイトを完成させてから切り替える。DNSの変更はメールにも影響する
- 「乗り換える」以外に、再交渉と一部内製化という選択肢がある
- 次の契約では、ドメイン名義と保守の作業範囲を必ず書面で確定させる
📎 参照した一次情報
数値は執筆時点の公表値です。制度・相場は変わります。契約前に必ず最新の一次情報をご確認ください。
よくある質問
Q 制作会社に「乗り換えたい」と伝えるのは、いつが適切ですか ▾
引き継ぐべきものの所在をすべて確認し終えたあとです。解約の意思を先に伝えると、その時点から協力を得にくくなることがあります。順序としては、①契約書で解約条件と権利の帰属を確認する、②ドメインとサーバーの名義をWhoisや管理画面で確認する、③次の依頼先を決めて移行計画を立てる、④そのうえで解約を申し入れる、という流れが安全です。なお、契約書に解約予告期間(1〜3ヶ月前など)が定められている場合は、その期限から逆算して動く必要があります。
Q ドメインの名義が制作会社になっていました。取り戻せますか ▾
移管に応じてもらえるかは、契約内容と交渉次第です。費用を負担して取得したのが自社であれば、その根拠(見積書・請求書の明細)を示して移管を求めることになります。応じてもらえない場合、法的に争う選択肢はありますが、時間と費用がかかります。実務上は「ドメインを変更して作り直す」ほうが早いケースもあり、その場合はSEO評価の引き継ぎと、名刺・印刷物・看板の刷新コストを天秤にかけて判断します。詳しくは関連記事で扱っています。
Q 新しい会社に見積を依頼するとき、何を渡せばいいですか ▾
現在のサイトのURL、ページ数、更新頻度、現在支払っている初期費用と月額、契約の残期間、そして「いま何に困っているか」です。現行の契約書は、守秘義務条項がある場合があるため、条文を確認してから共有してください。なお、新しい会社が現行サイトを見たうえで「うちならもっと安くできます」とだけ言う場合は注意が必要です。何をどう変えるから安くなるのか、工程レベルで説明できるかを確認してください。
Q 乗り換えの途中でサイトが止まることはありますか ▾
あります。最も多いのは、ドメインの移管や向き先(DNS)の変更を、新サイトの準備が整う前に行ってしまうケースです。手順としては、新サイトを別環境で完成させ、動作確認を終えてから切り替えるのが原則です。また、メールアドレスに同じドメインを使っている場合、DNSの変更でメールが届かなくなることがあります。Webとメールは別の設定であることを、双方の担当者に必ず確認させてください。